海外研修(ロシア医療制度視察の報告)
ベル薬局グループでは薬剤師 管理栄養士 調剤薬局事務を対象に、社会人として医療人として視野を広げてもらうために、社外研修の一環として海外薬局視察ツアーに参加しています。
2019年はロシア ウラジオストクの薬局に視察に行ってきました。
■ロシアの基本情報
・国土面積:約1,710万平方km(世界第一位)、日本の約45倍、米国の約2倍。
・人口:約1億4344万人(2016年)。
・首都:モスクワ(今回訪れたウラジオストクとは約9,229km離れている。)
・公用語:ロシア語
・気候:訪問した6月は日本で言うと春くらい
・平均収入:一般職(普通に大学を出て就職)6万円
薬剤師10~12万円(新人7万円)
医者は薬剤師より給料が低い。
・保健状態:1996年より法定健康保険に基づいて無料で医療を受ける権利を有するが、ソ連崩壊によって社会・経済・生活様式が変化し、ロシア人の保健状態は悪化。男女における平均寿命は男女差が大きい。
男性62.77歳、女性74.67歳
平均寿命は68.67歳(EUや米国の平均よりも10歳ほど下回っている)
・歴史:1917年ロシア革命を起源とし、レーニン率いるポリシェヴィキによりロシア社会主義連邦ソビエト共和国が設立。その後内戦を経て、1922年ロシア、ザカフカース、ウクライナ、ベラルーシ各共和国を統合、ソビエト連邦が形成
1991年ソビエト連邦崩壊、ロシア共和国が連邦から離脱、ロシア連邦として成立
・民族:約180を超える多民族国家。約80%がロシア人、次いでタタール人(3.9%)、以下ウクライナ人をはじめ2%以下の少数民族で構成。
・教育:義務教育9年間(就学年齢6歳以上)。
だが、初等から高等教育まで一貫して行われることが多い。
義務教育終了後は大学を目指した高等学校コースと専門学校へ進学するコースに分かれ、高等学校は10年~11年の2年間、大学は学部により就業年数が5~6年間の4-5-2-5制。
【薬局】
・ロシア全土で約56,000件の薬局が存在。
歴史的に国営だったが、その後民営化が進んでいる。
・大手スーパーチェーン・大手薬局チェーンの進出により小規模薬局・キオスクの数は減少。
上位10社の市場シェア合計は約23%であり、多くの薬局は市場シェア1%以下の小規模薬局。
・薬局の出店形式はマンションの1階に入居、スーパーマーケットの店舗内にShop-㏌-S hopの形態で運営、民間病院やクリニック内にテナント形式で店を構え、経営はその病院・クリニックとは関係なく運営されている。
【営業時間】
・外来クリニックを特定していないこともあり個別に運営
・24時間営業の薬局は全体の5%以下(モスクワ市内に多い)
・普通の薬局は9時~21時までの店舗が多い。
【薬剤師】
・薬剤師になるためには2通り。どちらも6年間。
・薬学部について
男女比:男:女=1%:99%
(入試は難しくない。滑り止めで受験。)
・薬局内に規模にもよるが2~3名勤務しており、症状と予算を伝えると薬剤師が見合った医薬品を推奨、患者は薬剤師の権限からの推奨に従うことが多い。
・代替調剤も行われており、医薬品の選択にあたっては薬剤師の役割は大きい。
【在庫】
・処方箋薬でも多くは1箱20錠などが入った小箱包装が主体。
・チェーンでの全社在庫数としては約35,000種類、デットストックについては6ヶ月以上
在庫がある製品は製薬会社と交渉し、値下げを実施したり、販促したりと対応している。
・基本的方針として、有効期限の60%以上あるものしか受け入れていない。
【処方箋】
・基本的には医薬品の購買には、医師からの処方箋が必要になるが、麻薬・向精神薬や抗生物質などの自由な取扱いが禁止されている薬剤を除いた処方箋薬は処方箋なしで薬剤を購入できる場合が多い。(ボルタレンゲル100g…513ルーブルで販売)
・処方箋に記載されている薬を変えて渡すこともあり。(基本的な法律はあり。)
・ロシア人が薬局で年間1人当たり購入する薬剤の平均費用は5,400ルーブル。(約1万円)
・1薬局当たり年平均2,500人が薬局を利用している。
・処方箋期限:処方日数の制限はない(実質リフィル処方箋)
・処方箋記載:一般名
・処方箋:2種(107、148。サイズが異なる。)
・保管期間:2年
【薬局での医薬品購入】
ロシアでは体の具合が悪くなったら、よほど深刻な状態でなければまず薬局で薬を購 入して対応することが多い。そのためロシア人は医薬品に対して自らが興味を持ち、成分・生産地などを細かく確認し購入する傾向があり、日常生活でよく薬局を利用する。
「医者より薬剤師」という認識が高い。
【保険】
・強制医療保険と民間任意医療保険の2種
・国民はそれぞれの保健制度の対象となっている医療機関に対し、かかりつけ医となる医療機関の登録申請を行い自分の登録した医療機関で診察を受ける仕組みとなっている。
・国民はそれぞれの加入している保険制度内で、指定されている病院及び対象となる医療サービスに関して、無料で医療サービスを受けることができる。(医療サービスの範囲外では有料診療となる。)
・民間病院は基本的に有料であるが、保険のカバー範囲であると診察代の請求が可能
・無料の範囲は定められており、それ以上の診察に対しては追加料金を払う必要がある
・制度上は民間病院も対象であるが、実態は公立病院が対象
- 強制医療保険
全国民が加入する
就労者については雇用者が直接、非就労者については地方行政府が保険料を全額負担。
ただし、基本的に国が定めた特定の医療サービスのみをカバーしており、サービスの拡大が検討されている。
- 民間任意医療保険
付加的に加入する仕組み。
対象となる医療機関やサービスは強制医療保険よりも多く、より高度な医療サービスを受けることができる。
民間任意医療保険契約形態のうち、企業が雇用者のために契約する形態は約8割、個人で契約する形態は約2割。
高齢者や無職など、低所得者層は個人加入するケースは少ない。